松田聖子の超難曲「夏服のイヴ」

先日ボーカルレッスンで生徒さんにスキャットをやってもらいました。
ロングトーンで音程を一音・半音と変えていくスキャットですが、宇宙戦艦ヤマトの「無限に広がる大宇宙」みたいなスキャットを想像してみてください。
いろんな音程やリズムを織り交ぜながら行うスキャットとはまた別の難しさがあってとても神経を使います。

それで思い出したのが松田聖子の「夏服のイヴ」という曲。
ジャズトランぺッターの日野皓正が作曲していますが、個人的には史上最高難度の歌謡曲だと思っています。

一体どこがそんなに難しいのか?
冒頭で述べたスキャットと同様に音程があまり上下せずに、一音・半音で微妙に動くのがこの曲のAメロです。
それも低音域で行われるため余計に難易度が増しています。

人間の耳の感覚は中高音域をとらえることより低音を聴きとることのほうが難しい。
それも女性の声の音域で求めるのだから日野氏はかなり意地悪な作曲をしている気がします。
しかしそんな日野氏からの挑戦状にも見事に応えている松田聖子も素晴らしい。

この曲の難しさのもうひとつの面は拍子とリズムです。
3拍子でつづいていた曲が後半は4拍子にリズムチェンジする。

3拍子の歌いまわしで一番難しいのは4小節目から6小節目にかけての「わたし待ってた」の部分。
5小節目の1拍まえからシンコペーションして入って6小節2拍目までロングトーンで引っ張る。
わたしの「たー」をどこまで伸ばすかは正確に拍子を理解していないと歌えません。

トランペットの間奏部分はまだ3拍子のままですが、ベースラインがファンクのように跳ねてスネアドラムが強調されているのでボヤっと聴いていると拍子を見失いそうになります。
「間奏なんだから歌は関係ない」これではいけません。
間奏後に迷わず歌いだすためにはしっかりとリズムを取って準備をしておく必要があります。

最後のサビ部分の直前から突然4拍子に変わります。
ここが最大の難所ですがどうやってリズムチェンジしているのか?きちんと説明できるボイトレ講師はどのくらいいるのだろうか。

歌詞でいうと「一番美しい夏にして」の「て」から4拍子が始まります。
1小節待ってからドラムフィルがあってストリングスが入ってきますが、いずれもストレートな表現をしていないのでリタルダンドしたような錯覚に陥ってしまいます。
4拍子に変化しているのでサビの歌いまわしも当然変化して、裏拍が強調されたメロディとなる。

ざっと説明するとこんな感じですがここまで難しい歌謡曲はほかに聴いたことがありません。
音楽というのは「拍子という時間軸」の上に成り立っているのでボーカリストも無視することはできません。
発声や声の音域を広げることも大切ですがリズムについても深く学んでほしいです。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です